【はじめに】
ActRecipeは、クラウドサービス間のデータ連携に特化したプラットフォームとして、SaaS間の統合や自動化を柔軟かつ安全に実現できます。
一方で、ローカル環境(オンプレミス)とのファイル同期については、直接的な対応は範囲外となっているため、補完的な手段としてファイル同期ツール「Rclone(アールクローン)」を活用することで、より幅広いユースケースに対応可能となります。
本記事では、Rcloneを組み合わせてオンプレミス環境とのファイル連携を効率的に実現する方法をご紹介します。
【Rcloneとは】
Rcloneは、複数のクラウドストレージサービスとオンプレミス環境を連結するコマンドラインツールです。
- 無料で利用可能
- Windows / macOS / Linux 対応
- Google ドライブ / Amazon S3 / OneDrive などに完全対応
【利用ユースケース】
- クラウド → オンプレミス:Google ドライブ / Amazon S3 などに保存されたファイルをRcloneでオンプレミスにダウンロード。
- オンプレミス → クラウド:社内ファイルをRcloneでGoogle ドライブなどにアップロード。
- ActRecipeとの連携:Rclone で同期したローカルファイルをActRecipeで読み込む。データ取込やAPI連携処理が可能になる。
【Google ドライブ との接続手順】
※以下は Windows 環境での操作手順を前提としています。
- Rcloneをインストールする
- 公式サイトへアクセスします:https://rclone.org/downloads/
- ページ内の「Download」セクションに、Windows / macOS / Linux それぞれのOSに対応した実行ファイルが掲載されています。
ご自身のOSに該当するリンク(例:「Windows」欄の「Download」)をクリックしてダウンロードしてください。
参考:https://rclone.org/downloads/ - zipファイル(例:rclone-current-windows-amd64.zip)がダウンロードされます。
- ダウンロードしたzipファイルを右クリックして「すべて展開」を選び、任意の場所に解凍します。
- 解凍されたフォルダを右クリックして、ターミナル/PowerShellで開きます。
- 次のように入力:
rclone version
- バージョンが表示されていればインストール成功です。
- 現状のままですと、"rclone-v1.69.1-windows-amd64" を毎回経由する必要があるため、”rclone.exe” のあるフォルダを PATH に追加します。
- エクスプローラーで ”rclone.exe” のあるフォルダを開く
- パスをコピー(例:C:\Tools\rclone-v1.69.1-windows-amd64)
- スタートメニュー →「環境変数」と検索 → Path を編集 → 上記パスを追加
- ターミナル/PowerShellを再起動することで、”rclone” コマンドが使用可能になります。
- Rcloneに連携するGoogle ドライブの設定(リモート設定)
- 次のように入力:
rclone config
- ”n” を押して新しい remote を作成
- 任意の名前を入力(例:TestGoogleDrive)
- ストレージの種類は ”20 / Google Drive” を選択(番号または文字入力)
- ”client_id ” ”secret” は空欄のまま Enter
- 権限は "フルアクセス" を選択するため ”1” と入力
- アカウントの認証情報欄を空欄のまま Enter
- 追加の設定をしない場合 ”n” と入力
- ウェブブラウザでの認証を行うため ”y” と入力
- 認証タイプで "自分のアカウント" を選択(ブラウザが開く)
- Google アカウントでログイン・認証を許可(成功すると以下の画面が表示)
- "使用する共有ドライブを選択" の項目が表示される
- 個人用なら ”n” を入力
- 共有ドライブを使用する場合は ”y” を入力し、表示される共有ドライブ一覧から番号を選択
-
確認画面が表示されるので、設定に問題がなければ ”y” を入力
- ”q” を入力して設定終了
- 設定完了後、"TestGoogleDrive:"が追加され、次のように入力:
rclone ls TestGoogleDrive:
- ファイル一覧が取得できているかどうかで接続が成功しているかを確認できます。
- 次のように入力:
【ユースケース早見表】
注意:以下のコマンド中に出てくる”C:\Users\○○\local-folder”や”TestGoogleDrive:test-folder”などの値は、各ユーザー環境によって異なります。必ず以下を確認・変更してください:
- C:\Users\○○\local-folder:ご自身のパソコン上の対象フォルダのパス
- TestGoogleDrive:Rcloneで設定したリモート名(config時にユーザーで決めた名前)
- test-folder:クラウド上で同期対象としたいフォルダ名
【ActRecipeとの連携の一例】
以下のレシピと、Rclone を組み合わせて、Google ドライブに保存されたファイルを自動でオンプレミスにバックアップする方法をご紹介します。
利用シーン | クラウド上の保存先 |
Rclone 同期先 |
契約書の社内保管バックアップ | GoogleDrive:gmo_contracts | C:\gmo_contract\backup |
- 上記レシピにより、GMOサインから取得したPDFファイルがGoogle ドライブ内の”gmo_contracts”に保存されるよう設定します。
- ターミナル/PowerShellを開き、次のように入力:
rclone sync TestGoogleDrive:gmo_contracts "C:\gmo_contract\backup" --include *.pdf --progress
- 自動的にバックアップを取得したい場合
- バッチファイルを作成(例:”gmo_sync.bat”)
以下の内容をメモ帳に貼り付けて ”gmo_sync.bat” として保存:
※ローカルのみに存在するPDFファイルは削除されます。それを避ける場合は”rclone sync”ではなく”rclone copy”をご利用ください。
-
@echo off
chcp 65001 >nul
REM ▼ 各種変数設定
set LOGDIR=C:\log
set DEST=C:\gmo_contracts\backup
set TODAY=%date:~0,4%%date:~5,2%%date:~8,2%
REM ▼ フォルダが無ければ作成
if not exist %LOGDIR% mkdir %LOGDIR%
if not exist %DEST% mkdir %DEST%
REM ▼ 同期実行(PDFファイルのみ対象、詳細ログ出力)
rclone sync "TestGoogleDrive:gmo_contracts" %DEST% ^
--include *.pdf ^
--log-file=%LOGDIR%\gmo_sync_%TODAY%.log ^
--log-level=DEBUG ^
--stats=1s -
タスクスケジューラで自動実行を設定
-
スタートメニュー → 「タスクスケジューラ」を検索して開く
-
「基本タスクの作成」をクリック
-
名前例:GMOサイン 同期ジョブ
-
トリガー:「毎日」→ 時刻を設定(例:毎朝6:00)
-
操作:「プログラムの開始」→ 参照 から ”gmo_sync.bat” を選択
-
-
-
実行確認
-
指定時刻になると自動でバックアップが開始されます。
-
ログは ”C:\log\gmo_sync_YYYYMMDD.log” に出力されます。
-
テスト実行は ”.bat” を手動でダブルクリックします。
-
- バッチファイルを作成(例:”gmo_sync.bat”)
【注意点】
- RcloneはActRecipeとは別の独立したツールです。そのため、ファイルアクセス制御、認証方式、通信の暗号化などに関するセキュリティポリシーは、ActRecipeとは異なります。業務で使用する際は、社内の情報セキュリティ方針に準じ、システム管理者やセキュリティ部門と事前に確認を行うことを推奨します。
- ActRecipeでは、Rcloneの動作保証やテクニカルサポートは提供しておりません。
- コマンドオプションの”--dry-run”はファイルを実際には操作せず、処理予定の内容だけを確認できる安全な機能です。誤った設定により重要なファイルが削除・上書きされるリスクを未然に防ぐため、本番運用前には必ず”--dry-run”で事前検証することを推奨します。
【おわりに】
ActRecipeはクラウドサービス間の連携に特化した強力なプラットフォームです。
さらにオンプレミス環境とのデータ同期も組み合わせたい場合は、無料ツール「Rclone」を活用することで、より柔軟で広範なデータ連携が可能になります。業務に応じた連携方法を選択することで、SaaSとオンプレミスの境界を越えた自動化を実現できます。
■Google ドライブと連携ができるレシピ